嫁ぐ私の代わりに来た家族

当時お付き合いしている人を初めて実家に連れてきて紹介した日の夜、彼の見送りのため駐車場に出てみると白い子犬がうろうろしていたので近づいて様子を見ていました。足取りがおぼつかなくまだ生後2、3週間くらいといったところでプラスチックバンドのような首輪をしていました。子犬のわりに体は大きく、金色の美しい毛色ですぐにゴールデンレトリバーだとわかりました。迷子のようで気になりつつもいきなり家に連れて帰るのも気が引けて立ち尽くして考えていると私に近寄ってきたのでその夜は家に連れて帰りました。

翌日飼い主を探して近所を訪ね歩いたのですが、結局飼い主は見つからずそのまま飼うことになりました。金色の毛とまつ毛までも金色で、テニスプレーヤーのボリス・ベッカーに似ているというところから父が「ベッカー」と名付けました。その後まもなくして私の結婚が決まり、実家から遠く離れたところに嫁ぎましたが、しっかりと家族の存在感を発揮して私が家を出た穴を私以上に両親を喜ばせてくれました。私がベッカーと暮らしたのはひと月ほどでしたが、私が2年後に帰省した時、ベッカーは私を見つけると「ああ!」と思い出したような表情をして抱きついてきました。

別れたころは中型犬くらいの大きさだったのが、二本足で立ちあがると私の身長を少し超すくらいに大きくなっていたのでびっくりしました。父がとてもかわいがっていて早朝と夕方の散歩を毎日欠かさず行っていて、出不精で太り気味だった父がかなり健康的になりました。ベッカーは今はもう天国ですが、私たちの家族に楽しくて幸せな時間をもたらしてくれました。

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