その日は朝からどうにもツイてなかった。目覚まし時計は鳴らないし、コーヒーをこぼすし…そして極めつけは、仕事から疲れて帰宅した時のことだ。玄関の前でカバンをごそごそ、ポケットをまさぐり…ない。家の鍵がない!
「マジか…」と思わず声が出た。まさかこんなドジを踏むとは。いつもは定位置にいるはずの鍵が見当たらない。昨日使った記憶はあるんだけど、どこで落としたんだろう?通勤途中の電車の中か?それとも会社のデスクに置き忘れたか?いや、まさかまさか、泥棒にでも狙われたか!?
焦りながらも、まずは冷静になろうと深呼吸。もう一度、さっき通った道を戻ってみたり、カバンの中身を全部ひっくり返してみたり。 почта のレシートやら、いつの間にか溜まったポイントカードやら、どうでもいいものばかりが出てくる始末。肝心の鍵はどこにもいない。
途方に暮れて、とりあえずマンションの管理会社に電話してみた。「あの、すみません、鍵をなくしてしまって…」と情けない声で事情を説明すると、案の定、スペアキーの保管はないとのこと。ですよねー。
こうなったら最終手段か…。頭をよぎるのは、高い料金でボッタクリまがいの鍵屋さん。でも、他にどうしようもない。スマホで慌てて近所の鍵屋さんを検索し始めたその時だった。
ふと、今日使っていた少し大きめのリュックが目に入った。まさかとは思ったが、念のため中をまさぐってみる。ファイルやペットボトルの隙間を掻き分け、奥の方に手を伸ばすと…ん?なんだこれ?柔らかい感触…。まさか…
出てきたのは、まさしく我が家の鍵!しかも、リュックの内側の、クッション性のある柔らかい部分に、まるで隠れるように挟まっていたのだ。そりゃ見つからないわけだ!
今まで俺が費やした時間、管理会社に電話した時間、鍵屋さんを探した時間…全部返してくれ!そして何より、あの焦燥感と不安感をどうしてくれるんだ!…まあ、最後は見つかったから良いんだけどさ。
今回の件で学んだことは一つ。自分の持ち物はきちんと管理しよう、ということ。そして、カバンの奥底には、時として恐ろしい魔物が潜んでいるということだ!まったく、俺の時間と金を返せ!…って、今回の件は全部自分のせいか。ははは…(乾笑)。